2012年1月28日土曜日

3時間のコンサート鑑賞!シェーンベルクの夜@マドリード国立音楽堂



行って参りました。シェーンベルクの夜。フランスの有名なカルテット「ディオティマ」による、シェーンベルクの弦楽四重奏の全演奏(4作品)。開演は夜の10時半。途中10分の休憩を挟んで3時間以上の公演。劇場を後にしたのは深夜2時を回った頃でした。

写真:マドリードの国立音楽堂 

この音楽堂では、来月カニサレスも公演を控えています!


写真:今日のプログラム

今日の公演は、なんとスペインで初の、シェーンベルクの弦楽四重奏全演奏という壮大なプロジェクト。断片のみ残っている物を除く、4作品を一挙に披露。シェーンベルクの音楽的発想の移り変わりが時系列でよくわかる、素晴しいコンサートとなりました。


弦楽四重奏第1番は、4つの楽章からなる45分程の作品ですが、驚くことに、それぞれの楽章の切れ目がほとんどなく、45分間演奏しっぱなしという大作。この頃のシェーンベルクは、まだ調性音楽の粋を出ていませんでした。だから、ニ短調という調が存在するのですが、とはいえ、その後の無調性音楽を伺わせる旋律が繰り返される曲でした。


弦楽四重奏第2番。これがシェーンベルクが、無調の音楽を確立した作品、と言われている作品です。弦楽四重奏とはいえ、4楽章のうち、最後の2楽章はソプラノがはいるという構成です。一応、嬰ヘ短調という調が存在しますが、第1番と比べても更に無調感が明らかになっています。ただ、美しいメロディーも所々に存在し、印象期には「無調を確立」というより「無調への過渡期」の方が正しい表現のような気がしました。とはいえ、ストラヴィンスキーの『春の祭典』が問題作品と観られ暴動が起きるような時代、この作品の斬新さといったらなかったでしょうね。


休憩を挟んで弦楽四重奏第3番。これは、前作第2番から約20年後に作曲された作品。既に調性は存在せず、従って、耳に残るメロディーなどもなく、通常の音楽感が破壊されたような作品。それなのに、この4つの楽章が、なんとなく統一感をもって聴こえるのは、この作品が12音技法(ドデカフォニー)を用いた作品だからなのです。ドデカフォニーは、複雑ですが、簡単にいうと、12音を均等に用いる為に、音列をつくり、その音列に従って作曲して行くのです。それにより、得られる統一感をさして、後にヒンデミットはこのドデカフォニーも一種の調だと主張しました。この話は、話し出すと切りがないので、続いての作品へ。


弦楽四重奏第4番。これは、第3番からさらに10年程後期の作品です。いつも思うのですが、第3番と第4番を比べると、第4番の方が分かりやすい、というか、しっくり来る感じがするのです。シェーンベルクがこの時既に無調の音楽の真骨頂に達していたからなのか、それともこの頃ナチスに追われてアメリカに移住しはじめていたからなのか。理由はともあれ、聴きやすいのです。例えば、第3楽章の始まりの部分などは、調性音楽に戻ったかのような、ロマンチックさが一瞬漂うし(とはいえ、無調ですからすぐに灰色の世界に引き戻されますが)。


3時間という長い公演でしたが、シェーンベルクの音楽の遍歴を辿れる、素晴しい一夜でした。




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